みんなと分かるミャンマー

ミャンマーの平和を願う日本人です。

チャット相場と購買力平価

為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという「相対的購買力平価」理論に基づくチャット/ドルレートの推移と実勢レートを比較したのが下記の図です。

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オレンジ線は、チャット/ドルの実勢為替レートの推移です。2011年まで公式レートと非公式レートが並行して存在していて、非公式レートの正式な統計はないのですが、ここでは、1988~1999まではDr. Sean Turnell(今ミャンマーで拘留されています泣)の本から借用し、その他はIMF統計を使っています。

青線は、1989年の実勢チャット/ドル為替レートを起点にし、これにチャットベースの物価上昇率からドルベースの物価上昇率を引いた率を毎年かけていった数値の推移です。(「修正価格指数」)

青線は長期的な為替レートの動きを説明する「相対的購買力平価」理論の考え方を適用した場合のチャット/ドルレート上限(上の青線)、下限(下の青線)と考えてもらえばと思います。

 

チャット・レートが、途中色々なことがあっても結局、ミャンマー国内物価の上昇(から米国等の物価上昇率を引いたもの)とほぼ軌を一にして動いてきていることが確認できます。

 

日本や他の国でも同じようなグラフが書けますが(例えばこちら)、資本規制がなく、国内・海外投資家の間で、株式・債券・為替の売買がスムーズに行えるような場合、短期的な為替の動きはよりダイナミックになります。

比べて、資本規制のあるミャンマーのような国では、モノの動きと極端に異なる資金の動き(投資・投機)は短期的にも生じにくく、結果、為替レートもモノの価格に連動しやすい、という説明も可能です。

なお、現地では表の統計に出てくる為替取引の数倍の規模の取引が正規でないやり方で行われていると言われています。誰もその規模を把握できていませんが、仮にこれが正しい場合でも、通常の状況では(今は海外への資金逃避が少しずつ起きている可能性があり通常とは言えないかもしれませんが)、そういったお金の動きの裏には合法非合法問わずモノの動きがある可能性が高く、そのモノの動きは国内物価に影響を与えます。であれば、先進国のように金融取引のみの要因により、物価の動きと大きく異なる為替レートが「持続する」可能性はかなり低いと考えられます。

 

(補足)
上の青線は、ドルベースの物価上昇率を2.5%と置いています。米国のこの期間の平均物価上昇率です。下の青線は、ドルベースの物価上昇率を3.5%と置いたものです。ドルは米国以外でも使われており、そういった国の多くは米国より物価上昇率が高いので少し高めに設定しています。ドルベースの物価上昇率に毎年の実績を使う方が良いですが、大して変わらないので、平均値で一定と仮定しています。

 

チャット/ドルレートを動かす要因とは

①国内物価の動向

上の図は、少なくとも中長期的には、チャットレートがミャンマー国内の物価上昇率に合わせて動いてきていることを示しています。

ミャンマーでは上記期間中も、様々な要因により年間数十パーセントというインフレがザラにあり、チャットはそれと並行してすう勢的に減価してきています。

国連世界食糧計画(WFP)によれば、物流コストの上昇から、米、食用油、マメ類が2月/3月の一月で5%、9%、5%に上昇していることが報告されています。仮に国内の生産が滞れば、モノの価格が高くなり、更には国内生産で足りないモノの輸入が増えて、チャット安と輸入物価も上がります。

短期的には、チャット安⇒輸入物価高への連鎖は目につきやすいでしょう。富裕層が海外逃避するなどしてチャット安に繋がれば、輸入品や原料が値上がりし、その分国内物価も同時に又は時間差で上昇します。輸入に頼っているガソリンなどは既にチャット安とほぼ連動して価格が上昇しています。

 

財政赤字、マネーサプライの動向 

政府の財政赤字や、財政赤字に伴い中央銀行が紙幣を刷ってマネーサプライが増加すれば、チャットへの信用がなくなりチャット売・外貨買に繋がったり、物価上昇を通じてチャット安となります。

これらが顕著だったのが、1997~2002年ごろです。この間、チャットは物価上昇では説明できないほど安くなりました

1990年代を通じて財政赤字GDPの5~7%で推移し、国営企業の赤字が重荷となっていました。赤字幅自体は実は他国と比べて特に大きいわけではなかったものの、支出が少ないのにも関わらず他国と同じぐらいの赤字があるなど、特に税収基盤が弱く(下図参照)、赤字分の殆どを(民間銀行が国債を引き受けるのではなく)中央銀行ファイナンスで賄っていたことが大きな要因と指摘されています。

(補足)
中央銀行ファイナンス:政府がその年に必要な支出を行うにあたり、税収などで足りない分を中央銀行から直接借りること。単純化すると、政府職員の給料を新しく印刷した紙幣で渡してしまうこと。この場合、渡した新紙幣の総額は中央銀行のバランスシートの負債側に丸々記載され、かつ、給料として支払われた現金は彼らの必需品の購入などで市中で使われるので、マネーサプライも丸々増加する。

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(出所)三重野文晴(2012)より

 

なお、1997年のアジア通貨危機で頼みの綱だった直接投資が極端に落ち込んだことも、チャット安に拍車をかけています。

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(出所)三重野文晴(2012)

なお、2011年以降の改革の一環で、2016年9月から満期1年以上国債のオークション制度が開始され、中銀ファイナンスが相当程度抑制されてきていました(下図)。それまでは国債利回りが魅力的なものでないことなどから、民間銀行の国債保有は少ない状況でした。結果として、その後は物価上昇率は依然と比べて格段に安定しています。

この点、2月以降は表立って国債オークションが実施されておらず(発表されないだけで民間銀行に買わせている可能性はあります)、市民不服従活動(CDM)により税金も相当減少する可能性が高いと思われます。中銀ファイナンス比率が高くなれば、1990年代の二の舞というリスクもあり得るかと思います。

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(Source) IMF(2021)

(補足)
伊藤隆敏・熊本万雄(2005)が1997年から2002年の月次データを使って、マネーサプライ、物価上昇率およびチャット相場の関係を実証分析しています。結果は、マネーサプライが増えれば物価が上がり、物価が上がればチャットが安くなるという因果関係とそれらの長期的な関係性を示唆するものでした。

 

③輸出、輸入、投資の動向

ミャンマーの輸出、輸入、投資の動向も大きく為替に影響を与えます。これらの影響を大きく受けたのが図中の2009年ごろの急激なチャット高の動きです。

ミャンマーでは2000年代に天然資源(大きいのは天然ガス翡翠)ブームがあり、それまで赤字を続けていた貿易収支は縮小し、2007年~2010年には大幅な貿易収支黒字となりました。

2008年と2009年にはリーマンショックの影響でミャンマーも輸出が減って貿易収支が赤字となりましたが、資源セクターへの投資が大きく、資本収支がプラスだったことから、輸入超過で出ていくお金よりも、対内投資で入ってくるお金の方が大きいままでした。したがってチャット需要が大きくチャットの価値が高まりました。

なお、この時のチャット高には他の興味深い要因もあり、2011年までに行われた政府資産の大規模な民営化(売却)も指摘されています。政府資産の購入はチャットでなくてはならず、軍系や財閥系の大企業が(おそらく自身が海外に持つドルを売却するなど含め)チャットを買い、2011年8月、2002年以降最低の749チャット/ドルとなったこととのことです。(kubo, 2018)

また、2011年からのチャット安の動きについては、それまでは資源輸出と輸入規制などにより貿易黒字でしたが、2011年からの経済開放で、燃料や車など多くの輸入制限が緩和されたため輸入が急増し、2012年から貿易収支は赤字になり、特に2014年、2015年には輸入超過が50億ドル前後になったことで、チャット安が加速しました。ただ、同時に流入する投資も多かったため、これによる相殺効果でチャット安圧力はすこしは抑えられていたとみることができます。

 

この点、2018/19年度の経常収支赤字はGDP比2.8%、対内直接投資はGDP比3.1%でしたが、本年2月以降、海外からの投資が完全にストップする一方で、貿易収支の赤字構造がそのままであれば、今後チャット安圧力が大きくなるリスクがあります。

 

④廃貨リスク

そして、ミャンマーで現在とても意識されているのが廃貨の可能性です。

ミャンマーでは過去1964年5月、1985年11月、1987年9月に廃貨:その時使われているチャット紙幣が無効になり、その時点から新紙幣しか使ってはならない、という措置がとられました。

旧紙幣は銀行に持っていけば限定的に新紙幣と交換できたようですが、特に1987年の時には殆どの交換が認められず大変な混乱となり、1988年の民主化運動の引き金の一つになりました。

これらの廃貨には一応政策目標のようなものがあったようで、大資本家や闇商人が抱え込む現金の没収や高止まりしていたインフレの抑制(市中に出回る紙幣を減らす)という大義名分を掲げていたようです。

 

廃貨は経済に大打撃を与えることは間違いないですが、インフレ率や為替レートに直接的に影響を与えるものではありません。ただし、デノミ(名目値を10分の1にしたり)や他の経済要因や制度要因がある場合には別ですし、最近もインドでもあったように、旧紙幣の交換の仕方によっては、新紙幣とその数倍の旧紙幣が交換されるといったことはあるかもしれません。。

そうしたら手元の旧紙幣の価値がなくなるか、無になるので今のうちにチャットを売ってなるべくドルや別の資産で持っておこうという人がいるのも当然です。ただし、仮に廃貨となっても預金されている分が無効になるわけではありません。また、国内の不動産、自動車、貴金属などを買うという動きについては、国内でチャットの持ち主が変わるだけだし、一般物価への影響は大きくない点に留意が必要です。むしろ、廃貨を含めたミャンマー経済の先行きに不安を持った外国人や富裕層が、国外に資産を移すといった形で為替レートに影響を与えることになりそうです。

 

このような措置を取った過去がある以上、その可能性ないとも言えないわけですが、このタイミングでの廃貨は、さすがに大義名分が無さすぎるのではないかとも思います。インフレはここ数年ある程度安定している(た)し、闇で私腹を肥やした人に対する不満があるとどこまで主張できるのか。

 

ただ、軍側には、紙幣を廃止する大義名分はなくとも、(紙幣を廃止せず)追加的に異なる種類の新紙幣を発行したいという誘因はあると思われます。3月31日には、ミャンマー政府への紙幣の印刷システム技術や原材料を供与していたドイツ企業がその供給を停止しました。今まで通りの紙幣を発行できず、軍人への給与支払いにも困るようになれば、質を落とすか、別の支援先を探して何らかの異なる紙幣の印刷を始めざるを得ないかもしれません。

廃貨自体がなければ、新紙幣発行自体は財政ファイナンスの増加から緩やかに物価上昇やチャット安に繋がっていくものと思われます。

 

⑤チャット売りがチャット売りを呼ぶ?

実は既に、ミャンマー人の富裕層が手元のチャット現金を不動産や自動車さらには国外に逃避させているという話も聞こえてきています。同時に、急激なチャット安が進み、輸入物価も上がっています。

こうした状況を見た外国人や富裕層は、様々な方法を駆使して、われさきにと銀行にあるチャット残高をドルに換えて国外送金するか、不動産か貴金属類に変えようするかもしれません。

しかし、(上でも述べたように)国内で富裕層が不動産や貴金属を買うという点については、その裏にはチャットを受け取る人がいるわけであり、チャットの総量(マネーサプライ)が変わらない点に留意が必要です。

為替に影響を与えるという観点では、公式・非公式に国外送金する富裕層が増えている状況が直接的にチャット安を引き起こしている可能性が高いと考えます。このチャット安は、輸入物価の上昇という形で国内インフレ⇒中長期的な為替レートに波及していくことになります。

チャット安の動きが続き、国内物価が引きずられるように高まってくるような事態になれば、チャット安の動きが止まらないといった事態も残念ながら想定せざるを得ないように思います。

まとめ

色々申し上げましたが、実際のところ、ミャンマー経済にとっては、インフレ率や為替レート自体は単なる結果であり、現状では、必需品が十分に生産されているか、必要な輸入品を輸入できるか、が重要な課題だと思います。これに失敗すれば急激なインフレとチャット安が待っているというだけです。廃貨リスクや現状を嫌って資産を海外逃避させる動きは、チャット安を通じて必要な輸入品を入手し難くして、経済へのダメージ(大多数の国民の生活悪化)を加速化させます。

ただし、必需品の生産を優先し輸入を減らそうとするあまり、軍が生産や消費を直接コントロールしようとし始めればかなりのキケン信号です。結局は、起業家や生産者が安心して活動でき、外国企業の不安を治めることができなければ、、、計画経済でうまくいった歴史はどこにもありません。(自身の歴史に学ぶ必要がありますよね。。。)

なかなか利用可能なデータがない状況ですが、「現状では」国内総生産の21%を占める農業の生産に大きな支障がでているという話は聞こえてきていません。38%を占める工業部門の生産(輸出品も多く作る)はかなり稼働率が落ちている状況で、2月以降の輸出入も落ち込んでいますが、今のところ輸出だけ極端に落ちたとかいうことでもありません。

正確なデータが出てくるか不安ですが、引き続き要チェック。。。

こちら↓もどうぞ!

(参考文献)
伊藤隆敏・熊本万雄(2005),「ミャンマーにおける貨幣、インフレーション、為替相場の関係」、『ミャンマー移行経済の変容』, 藤田編.

・三重野文晴(2012),「成長の構造とマクロ経済」,『ミャンマー経済の新しい光』,尾高・三重野編.

・Sean Turnell(2009), "Fiery Dragons"

国軍企業の事業規模をフェルミ推定してみる

国軍系2社の開示資料は少なく、どの程度ミャンマー経済に食い込んでいるのかを正確に把握する方法は現状ありません。

何らかの数字がなければ、どのぐらい重要なのかイメージし難いし、議論が先に進まない。

そこで手に入る公開資料を基に、これら2社の事業規模を推定してみます。

(注)国軍企業とは何かについては以下をご参照ください。

(簡易的な)推定①

Amnesty International(2020)は、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)による配当金支払が1990年から指数関数的に増加し2011年には約200億チャットに上っていることを指摘しています。

2010年代もMEHLの配当が、名目経済成長率(実質成長率+インフレ率)に合わせて年率10~15%上昇したと仮定すると、2020年ごろには500~700億チャット又は、約40~60億円の配当原資を生み出している可能性があります。

これだけの情報からMEHLの生産額/売上額を類推するのは無理があるのは承知ですが、他に方法も見当たらないので、とりあえず国営企業合計の売上/利益の約10倍を使い、配当性向が100%近いとすると、MEHLの生産額/売上額は400~600億円ぐらいになります。(配当性向は100%より低かったり、そもそも利益を過少に計算している可能性が十分ありますので、保守的な仮定だと思います。)

更に、もう一つの国軍系企業:ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)については、配当や売上など一切開示情報が見当たらないですが、設立が1997年で若干規模が劣ると思われますが、子会社はMEHLと同じぐらいあります。これら2社合計で100以上の子会社があることを計算にいれ、連結生産額/売上額は400~600億円の10倍程度を見積もっておきましょう。

これに従えば、国軍系2社の連結生産額/売上額は大体4000~6000億円というイメージになります。ただし、これはあくまでも、公式の統計に含まれるであろう数値の推定である点は留意する必要があります。

これだけだと如何にも根拠が薄そうなので、もう一つぐらいなんらか計算してみます。

(簡易的な)推定②

国連の報告によれば、国軍系2社の子会社、関連会社等の数は以下のとおりです。

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同2社子会社の約2割が鉱業関連であることに着目します。

他方、例えば、Myanmar Ruby EnterpriseやMyanmar Imperial Jadeは子会社として特定されているのの、これらの子会社(MEHLの孫会社)は上記表の数には入っていません。日本を含む先進諸国が支援する採取産業透明性イニシアティブ(EITI)は、ミャンマー政府に資料を提供してもらい現在までに第5次報告書を作成していますが、この中に出てくるMyanmar Ruby EnterpriseやMyanmar Imperial Jadeの多数の子会社(採掘ライセンスを多数所持)の名前は、上記リストには含まれておらず、上記数値よりも鉱業関連の割合が大きい可能性が高いことが読み取れます。

翡翠含む鉱業は1988年までは民間に解放されていませんでした。また、翡翠の有力な鉱区は、カチン州のいわゆるコンフリクトゾーンにある(マンダレー管区にも有力鉱区あり)ことを踏まえれば、激しく反発する少数民族武装勢力を押しのけ、国軍がこれら地域を支配下に置き、民間企業に鉱区を割り当ててきたことが容易に想像できます。実際、そのあたりの事情はGlobal Witness, 2015に多くの事例付きで紹介されています。

MEHLとMECは、こうした鉱区での採掘ライセンスを多数持ち、民間企業や外国企業との合弁事業として採掘ライセンスが数多く取得していることが確認できます。MEHLとMECの子会社、孫会社、ジョイントベンチャーを含めれば、翡翠産業のかなりの割合に関わっている可能性が高いと言えます。ちなみに、Glogal Witness(2015)は、採掘ライセンスを保有する数百社の実質的支配者は10~15名の有力者であるとの話を紹介しています。

そこで金額ベースで鉱業の大部分を占める翡翠産業の規模から国軍系2社の規模を類推してみます。

国際NGOのGlobal Witness(2015)は、中国側の中国のミャンマーからの翡翠等の輸入額が2014年だけで123億ドルであったことやその他の分析から、2014年に採掘され公式に記録された翡翠だけで最大3兆円相当の価値があったと推計しています。これはミャンマー国内総生産の約半分にあたります。(つまり公式統計に表れていない分、政府が把握していない分がすごく大きい。)

この点、中国側の同統計は、前後の年と比べて2014年が飛びぬけて大きな数字となっていて、これは主にその年特に翡翠の価格が高騰したことが大きな要因のようです。また、ミャンマー側の公式発表では金額ベースの翡翠生産は年間1000億円前後と驚愕の開きがあります。

もちろん、Global Witnessもそのあたり分かった上で推計しているのだと思いますが、個人的に、3兆円はやはり過大推計ではないかと思っています。実際、その後、Natural Resource Governance Institute等がGlobal Witness(2015)の推計をトレースして再検討したところ、7000億円程度と再推定しています。

なので後者を採用すると、公式に報告された産出量ベースで翡翠の金額ベース産出は毎年7000億円前後だと仮定します。このうちMEHL、MEC、子会社/孫会社の生産分が、少なく見積もって2割程度とすれば約1500億円

推計①では2社の全業種連結で4000~6000億円だったので、翡翠関連で1500億円というのは感覚的にも大きなはずれはなさそうです。

まとめ

確定的な公表数字がない中で、フェルミ推定的に計算してみましたが、国軍系企業の生産額/売上高は4000~6000億円程度で、国営企業の合計額と同じかそれ以上であると考えておけば大きな間違いはなさそうです。

但し、公式統計にない部分や、国軍が重要な影響を及ぼす(通常の意味での"関連会社"の定義に当てはまり得る)国軍幹部の家族や親密な友人の会社・事業などを含めれば倍以上の規模感となる可能性が高いことも付言しておきます。

(注)ミャンマー国内総生産は約6-7兆円。

信憑性があると考えるか否かは皆様次第ということで宜しくお願いします。

(使用した情報・レポート)
・Global Witness(2015), "Jade: Myanmar's Big Secret"

・UN Independent International Fact-Finding Mission on Myanmar(2019), "the Economic interest of the Myanmar military"

・Myanmar Extractive Industries Transparency Initiative(2020), "The Fifth Myanmar EITI Report"

・Amnesty International(2020), "Military LTD- the company financing human rights abuses in Myanmar"

・Natural Resource Governance Institute (2016) extracted from https://openjadedata.org/Stories/how_much_jade_worth.html